一般的に高校受験の合否を決めるのは英語だと言われています。

数学ではあまり点数に差がつかない理由としては、ほとんどの学校が関数と平面・空間図形の出題をメインにしているからです。

中学数学における関数や図形では、使える知識や公式があまり多くなく、塾のテキストや市販の問題集でほとんどの問題のパターンを網羅できます。

そのため、上位校を目指す子どもたちから見れば、関数・図形は点数が取れて当たり前になっているのです。

そこで今回は、数学を武器にして難関校受験の突破を目指す子どもに向けてが、数学で周りに差をつけるために、どんな分野をどうやって勉強すれば良いかをお話します。

難関高校を目指すならば関数と図形問題は必須

難関高校を目指すのであれば、関数と平面図形、空間図形の問題はできるようにしておきましょう。

図形問題については、解けないような問題が出題されることもありますが、関数分野は、中学三年生の夏休み前の時期までには基本的に解けるようにしておきましょう。

図形問題においても、標準的な問題や基本的な証明問題であれば、同じく夏休み前の時期までには解けるようにしておきましょう。

高校受験数学で穴になりやすい分野

高校受験の数学で関数・図形分野以外の問題はどのようなものがあるかをまとめてみると、大きく分けて

①方程式・連立方程式(不等式)の利用

②約数・倍数・素数などの、数の性質

③場合の数・確率

の3つがあります。

これらの問題は、小問集合での出題や大問一つ分程度の出題をされることがほとんどです。

受験する高校にもよりますが、数学全体のうち10~20%を占めることが多いでしょう。

数学で差をつけたい子はこれらの分野もしっかりと対策しておく必要があります。

そこでまずは、上記3つの分野について詳しくみていきましょう。

方程式・連立方程式の利用

方程式の文章題といっても、細かく分けると様々なパターンがあります。

しかし高校受験生が苦手とするのは、割合(売買や濃度)・速さ・規則性のパターンであることがほとんどです。

割合・速さ(旅人)の問題は、「公式を正しく理解する」・「何をXと置くか」を重視して演習を積めば苦手を克服できます。

ただ、速さの問題の応用パターンとして、中学受験算数でいう通過算(電車の問題)や流水算(川の流れの問題)・ダイヤグラム(速さのグラフ)の利用なども出題されることがあります。

また規則性の問題では、図形と規則などの、すぐに規則性を見抜いて立式するのが難しいものも多く出題されています。

数の性質

数の性質は、最大公約数と最小公倍数を利用する文章題・素因数分解など素数を利用する問題などを指します。

中3で平方根を学習する際、√nが整数になるためのnを考える問題などもこれに当てはまるので、数の性質の重要度はかなり高くなっています。

公立の小学校や中学校では、数の性質について深くまで触れないため、私立上位校レベルの問題の解法を知らない子が多いです。

また、問題・解法のパターンが多く、思考力を要するものが多いため、対策に非常に時間がかかる単元でもあります。

場合の数・確率

場合の数の正しい考え方が身につけば、確率も同じように解くことができます。

ただ、公立中では「数え上げ(樹形図の利用)」による場合の数をメインに扱うため、私立で出題されるような「積の法則」や「場合分け」を用いて解くパターンには対応できません。

私立上位校で出題されるのは複雑な場合分けを要するパターンがほとんどなため、過去問演習に取り組む前に対策しておいたほうが良いでしょう。

中学受験算数経験者のほうが有利

①方程式・連立方程式(不等式)の利用

②約数・倍数・素数などの、数の性質

③場合の数・確率

については、中学受験で頻出の単元です。

そのため、中学受験経験者が高校受験で別の学校を目指す際には非常に点数の取りやすい分野になっています。

高校受験が初めての受験で、数学を武器にしたい子にとっては、中学受験経験者が得意とする上記の分野でもしっかりと得点していく必要があるでしょう。

ただしこれらの分野は、受験する高校によって出題されやすいもの・そうでないものがかなり違ってきます。

過去問を見て傾向分析したり、数学の先生に聞くなどして、自分に必要な分野の知識を穴埋めしていくようにしましょう。

中学受験算数分野を得点源にするためのおすすめの問題集

高校受験 入試によく出る数学 有名高校編 合格への221  (佐藤茂 著)

この問題集は全て実際の入試問題から作られています。

関数・図形などの分野も頻出パターンが数多く載っていて、MARCH附属レベルまではこの問題集で対応できます。

解法のパターン毎に分かれていて、類題も数多く載っているので、一般的には過去問演習に入る前の総復習や、単元学習が終了したあと実践的な問題に取り組むために使うと良いでしょう。

今回の記事のテーマである、整数や方程式の文章題についても様々な問題が載っています。

パターン毎の例題に取り組むことで、知らなかった問題の知識を身につけることができます。

算数 プラスワン問題集

こちらは中学受験算数用の問題集です。

数の性質や場合の数の分野に関しては、中学受験算数の方がより多くのパターンに触れることになります。

高校受験数学の頻出パターンはある程度身についているけど、もっと数学を得意にしたいという子にオススメです。

数の性質・場合の数では、算数と数学で解法の違いはほとんどありません。

そのため、解説を見ても違和感なく理解することができます。

ただし、方程式の文章題(受験算数でいう特殊算・規則性)の分野については方程式を用いた解法になっていないため、独学で取り組む子どもにとっては注意が必要です。

よほど方程式に自信がない限りは、この分野は飛ばすことをオススメします。

個別指導塾や家庭教師(オンライン含む)などを利用している場合は、先生と相談して取り組んでみても良いでしょう。

基礎固めは最優先

難関高校を目指すのだから、「ハイレベルな問題をたくさん解かないといけない」と思い、難易度の高い問題集ばかりに取り組もうとする生徒を何人も見てきました。もちろん、最終的には解けるようにならないと難関高校には受かりません。ただし、何事にも順序があります。基本問題・標準問題を、簡単だからと軽視してしまっている子は、基本的には受かりません。基礎力を身につけるために何度も繰り返し演習している人の方が、結果的に模試などの偏差値も高く、ハイレベルな問題も解けるようになっています。教科書レベルから段階的に勉強することを強く薦めます。

基礎は簡単という意味ではない

基礎固めといっても、簡単な問題を解けるようにして欲しいという意味だけではありません。基礎というのは土台の部分のことで、少なくとも教科書にある定理を説明できないといけません。例えば、二等辺三角形の定義から、「頂角の二等分線は、底辺を垂直に二等分する」ことを証明できるか、また、それらを関連させて、ひし形の性質などもなぜ成立するかを説明できるのか。このような部分が基礎の部分です。

また、計算力の向上も必須です。計算を工夫して行えるかどうかこの点も確認しておきましょう。

受験勉強は数学だけではない

難関高校に合格するためには、数学だけではなく他の英語や国語のような他の科目が必要なことが多いです。数学の勉強ばかりをしないように注意しましょう。

また、試験本番までの日にちを数えて、他の教科を勉強した方が受かりやすくなる可能性が高い場合もあります。数学は勉強してもすぐに成績につながる教科ではないので、直前にがんばる教科としては不向きです。学校にもよりますが、理科や社会のような教科は、たくさん解いて暗記することで即、点が上がるので、直前期であれば、そちらを優先してください。

わかるではなく解ける

きちんと実力をつけて、難関高校に合格したい、あるいは上位校にトップで合格したいのであれば、基礎を固め、定理の証明ができること。どんな中学受験に頻出である分野が出てきても解けるようにすることが大事です。問題集を解く際も、解答例を見て理解したつもりになるだけでなく、本当にできるようになっているか何度も解きなおすことなども重要です。

投稿者プロフィール

山﨑 翔平
山﨑 翔平
個別指導の古賀塾の塾長。医学部予備校「メディカルラボ」、Z会グループ「アオイゼミ」などで講師経験と東進衛星予備校の校長としての教務経験をもっています。
入試問題の作成や模擬試験の作成、参考書やタブレット教材などの教材作成やマイナビ「中学受験受験ナビ」https://katekyo.mynavi.jp/juken/ などでの連載も行っています。
担当した子ども達に「しっかりと寄り添って自立させる」をモットーに親身になって指導をする先生です。